B-BLUE

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  1-1 旅の始まり  

とても涼しい風の吹く秋の日だった。
ここは、ある施設。
そこには親を亡くした子や身寄りのない子どもが沢山いた。
「おい!リュウト!早くしないと遅れるぞ!」
「うん。今行くね」
2人の子どもの声。
歳は10を過ぎた位だろうか。
「よし、今日はオレのイデロと、リュウトのルーンの勝負だ。今日こそ勝敗がつけばいいけど」
「大丈夫だと思うよ……。今日はなんか僕気分が悪いから、アルスが勝つと思うよ」
リュウトと呼ばれた少年が答える。
「そうか……じゃあ今日の勝負はお預けだ」
アルスと呼ばれたリュウトより少し背の高い少年が答える。
その時。
「!!!」
空から大きな鳥のルーンに乗った男が、とてつもないスピードで院長室の方へ飛んでいった。
「急ごうリュウト、院長先生が危ない!!」
先生に何があったんだ――――2人は急いで院長室のほうへと走った。

ドアを開ける。どうやら鳥と男は窓から入ったようだ。窓ガラスが粉々になっている。
「先生!大丈夫ですか!?」
「ああ……なんとか」
部屋はあまり荒らされていなかったが、置いてあった剣士像の持つ剣が無くなっていた。
「どうやら始まってしまったようじゃ……」
「何が?」
先生が1冊の本を取り出す。
「これを見てみなさい」
とても古い本。2人には読めない文字で書いてあった。
「どれ……わしが読もう――――

『昔、世界は神と人間と魔物が共存していた。しかし、あまりにも強大な力を持った魔物の王、暗黒天使が邪悪の世界にするため、魔物を引き連れ動き出した。
それを知った神と私たち人間はそれを阻止するべく、1つの巨大な神聖剣を創り、暗黒天使を封印することが出来た。
しかし、暗黒天使の呪いにより、世界は3つに分かれてしまった。
神の住む天空界、人間が住む地上界、魔物や暗黒の魂を持つ人間の住む暗黒界となった。
私が考えるに、再び暗黒の魔物たちが力を貯め、この世界すべてを邪悪にするため動き出すだろう。
まだ暗黒天使の手下の「キル」が生きているはずだ。暗黒天使×××××の復活の為……

もし、私たちの子孫がいるのなら伝えたい。

この世界には、かつて暗黒天使を封印するのに使った神聖剣があるはずだ。
しかし、封印の際、神聖剣は7つの元の神剣に戻ってしまった。3つのどの世界にあるかも分からない。
ここにはかろうじて七神剣の1つ水の「ウォーター・ブロークン」がある。
それを剣士像に持たせ、ここに置いておこう。
出来ればこの剣が2度と使われる事の無いように願って。

――――――と書いてあるようじゃ。疲れたのう」

「七神剣って何?」
院長が答える。
「ああ、それはわしも詳しいことは知らないのだが、
 雷の『サンダー・ブレイカー』
 水の『ウォーター・ブロークン』
 炎の『ファイヤード・ソード』
 光の『シオン・ラスター』
 闇の『ダーク・キラー』
 氷の『ブリザード・バスター』
 風の『ウィング・エッジ』
から成り立っているそうじゃ。ちなみに神聖剣の名前は『レジェンド・スレイヤー』と言うらしいぞ」
「じゃあ、もしかしてあの剣士像が持っていた剣は『ウォーター・ブロークン』?」
「そういう事になるな……」
院長が言う。
「今日はもう遅い、部屋に戻りなさい。わしも説明で疲れたわい。さて、どうしたものかな……」

2人は自分達の部屋に戻った。
「ねえ、アルス、あの剣は盗られてはいけない物だったんじゃないかなぁ?」
「やっぱりそうだろうな……院長先生も様子がおかしかったしな」
結局2人で話した結果、院長先生の部屋に様子を見に行く事にした。
「先生……?」
院長は部屋にいなかった。
「きっと風呂でも入っているんだろう」

リュウトが机の上にある1冊の古い本を見つけた。
「さっきの本かな?」
本を開く。やはりあのときの本だ。
その時、

バサッ!
何かが下に落ちた。古いノートのようなものだった。開いてみる。
5年前の日付だ。

――――――――――
××××年 ××月 ××日
今日は施設に新しい子どもが2人来た、かなり弱っているらしく口も利いてくれない。
子どもを連れてきた商人の話によると、東南にある遺跡で倒れていたそうだ。
小さい方の子どもは手に紙を握っていたそうだ。
紙には、『リュウト、まっているからね、かならずむかえにきてね。またお兄ちゃんと遊べたらいいね』
と子どもらしい字で書かれていたという。
近くにその子の兄らしき人が立っていたが、何かにさらわれてしまったらしい。

ついでだと、近くにあった剣を2つもらった。
おそらく、かの七神剣だろう。
この子どもと関係があるに違いない。
商人はそれ以上話してくれなかった。何か隠しているのは間違いないのだが、二人の手当てが先だ。
さあ、急ごう。
――――――――――

「…………」
「どうした?リュウト?」
アルスが聞いてくる。
リュウトは日記に書いてあったことを話した。
「え?じゃリュウトには兄がいるってことか?」
「アルス!僕、兄さんを探しに行きたい!」
「でも、手がかりも何もないじゃないか」
「手がかりか……。そうだ!あの剣を探せば良いんじゃないかな?
 そしたら剣を知っている人もいるかもしれないし」
「遺跡がある東南の方に行けば何か分かるかもしれない……」
しかし、問題があった、どうやってここを抜ければいいか。
「よし、リュウト、今から行こう。この事がばれてしまったら、おそらく院長先生はオレ達を逃がさないだろう」
2人は部屋に戻り旅の準備を始めた。
少しの食料。3日ぐらいはもつだろう。
あと、ランプと地図、アルスの剣。
リュウトは院長先生にもらったぬいぐるみを持っていこうと思ったが、やめた。
見るたびに今日の事を思い出すのを避けたかったからだろう。

静かな夜だった。
ここには戻ってこないつもりで2人は外に出た。
すると、
「おーい!2人ともどこへ行くのじゃ!」
院長先生の声。
先生ごめんなさい――――
そう言いたかったが、言葉が出なかった。
それほど惜しむ気持ちがあった。
しかし、ゆっくりしている暇があるなら兄に会いたかった。
2人は暗く淀めく闇の中に溶けていった。
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