B-BLUE

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  1-6 レースの中で  

「スタート!!」
バルサム姫の持つ、黒と白のフラッグが高く上がった。
一斉にたくさんの軍勢が舟でスタートする。
やはり風を受けてはしるだけに、どの舟も同じくらいだ。
静かだが、風のある空を駆けていく舟たち。

やがて、雲行きが怪しくなり、
「アルスゥ〜なんかくるよぅ」
フロウが気楽な声で言う。
すると、
突然波が激しくなり、空から稲妻が走る、その電光の先に黒い影が見える、何だろうか?
3人は目をこらして見る。
イルカ……のようでそうでない、目も左右3つずつ付いている奇妙な生物だ。
[それはプログラミングされた架空の魔物ですよー。デザインが浮かびませんでした]
とアナウンサー。

「まぁ、倒せばいいんだな。」
アルスが戦闘態勢に入る。剣を構え、前かがみになった。
ふっ、とアルスが舟を蹴り、飛びあがる、綺麗な動きで相手の頭上に飛び上り、
2人が見ている間もなく、剣を振りかざした、
さっと一瞬電気のようなものが走り、魔物は消えてしまった。

フロウが手をたたきながら。
「おみごとー。剣の腕いい感じだねぇ。ひとつ言うならば、もう少し切った時の水飛沫を抑えてくれないかなぁ?濡れるの嫌なんだけどなぁ」
フロウは一生懸命水を落としている。
リュウトは茫然とアルスを見ているだけだった。
いつも自分の前に立ち、自分に攻撃が来る前に倒してしまう。そんな人に自分もなりたいとリュウトはいつも思っていた。
そんな記憶が蘇る。
といっても、リュウトには院長先生に拾われる以前の記憶がないので何とも言えないが、とても懐かしい気はしている。

さらに進む、やはり最初の敵だけにほとんどの人間がクリアしている。
次の敵、どうやら先頭集団の位置からみるとこのあたりなのだが、どこにも見当たらない、
しかし、水の中に落ちていくライバルもたくさんいるようだ。敵は見えないのか?
アルスが慎重に周りを見る。見えない……わけではないようだ、空気の動きすら感じられない。
電波だということもあり得るが、さっきの敵は普通に感じることができた……。
ふと、
「上だよ〜くるよ。」
フロウが言う。
さっと、アルスが上を見る、見え……た。 敵は見えないのでも何でもなく、ただ小さいだけだった。
とても小さい小さいガラス玉のような大きさだった。
容姿はクリオネのようで、鰭がとてもひらひらしている。

アルスが構える。気を研ぎ澄ませて敵を狙う、小さい、それに動きが早い、どうしようとアルスが考えていると。

ぺちっ。


潰した。フロウがとん、と舟に降りる。

「え!?」

2人が声をあげる。

フロウはまるで蚊やハエをたたくように、掌で敵を落としてしまった。
「いやぁ〜これくらい簡単簡単」
大きなことをやり遂げたかといわんばかりの、満足そうな笑顔。
ぺっぺっ、と手を叩いた後、
「ああ、そうか、電波だったっけ。手は、はたかなくてよかったか。」
と一言、言った。
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