B-BLUE

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  1-4 魔物の正体  

少し笑う魔物。アルスが剣に手を伸ばす。
「何の真似だ?俺達は町の者じゃない」
アルスが剣を振りかざす。
「ま、待ってください!!」
魔物が慌てて言う。
アルスが手を止める。剣は抜いたまま。
魔物が困った顔で言う。
「助けて欲しいのです」
アルスが剣をしまう。この言葉に嘘は無いようだ。
2人は話を聞いた。
「あなた達の言う魔物は私の事でしょう。現に神剣を盗みましたし」
「何故?」
「仕返しがしたかったんです!1ヶ月程前、町の町長が変わりました。変わったまでは良いんです、でも、町長は言っていませんでしたか?猫が嫌いだ、って」
アルスが答える。
「確かに言っていた。子どものときに嫌な目にあったとか」
「それは違います!悪いのはあいつです!あいつが猫の尻尾を必要以上に引っ張ったんです!そのせいです!当たり前のことです!それで猫が嫌いになるぐらいなら良いんです。もう、触られることもなくなりますし。でも、あいつは違いました。町長になったとたん、『この町に猫なんぞ要らない!さっさと排除しろ!』そう言ったんです。そして町とその周りの猫はみんなどこかへ行ってしまいました……。私は猫を統べる者です。魔物、といえばそうなのかもしれません。でも誤解しないで下さいね。私は天空界の者ですし、人を襲うなんて決してしません」
アルスが言う。
「それで、どうして剣を盗った?」
「それは、あいつが一番大事にしていた物です。それと交換なら猫達を戻してくれると思ったんですが……駄目でした。あいつは剣より猫がいない方が良かったんです。そのとき私が昼の間ここに居る事もばれてしまいました。それからはひどい目に遭いました。町の周りには大量の罠が仕掛けてありますし、食べ物も遠くに行かないと食べられません。どうしようもないんです!……それで頼みなんですが、私をここから連れ出してくれませんか?」
「わかった。でもその盗んだ神剣を俺たちにくれないか?」
「それは構いません。ただし、危険ですよ」
リュウトが聞く。
「危険って何が?」
「1度、本当に1度なんですが、襲われました。剣を渡せと。そのときは運が良かったので勝ったのですが、いつまた襲われるかわかりません」
「そうか……やっぱりあの時の敵は剣が狙いだったんだ。そしたらこの剣は……神剣なのか?」
アルスが自分の剣に触れる。
猫を統べる者がアルスの剣に触る。
「これは神剣の内の1つ、サンダー・ブレイカーです。間違いないです。この剣から火花とか出ませんか?」
「出る、というよりこの剣で魔法を使うと雷が大きくなる」
「そうでしょう、それがしるしです。七神剣は属性を持っていて、使う者の魔力を上げる効果があります」
「そうならばあの剣は持っていった方がいいな」
「どうしてです?」
「あの剣を闇のやつらが狙っているとしたら、暗黒天使が復活する可能性が少しでもあるって事だろ。それに、俺達が剣を守る限り復活することは無い。こちらが先に神聖剣を完成させたら復活を永遠に止められる。覚悟はある」
「僕も……あるよ。このままでもどうしようもないから」
リュウトがおどおどと言う。
「さあ、ここから出よう――」

外はすっかり明るくなっていた。
洞窟をででしばらく歩くとそこに、町の人々がいた。町長も居る。
「おお!やったか!で、魔物は消えたか?」
アルスが答える。
「はい、退治して来ました。もうここには来ないでしょう。剣もこの通りです」
アルスが剣をかざす。氷のように冷たく光る、ブリザード・バスター。
「そうか!剣は約束どおりくれてやる!ところで、後ろの者は誰だ?」
後ろに居る、猫を統べる者を指差す、町長の顔が青ざめる。
「まさか!そいつが魔物か!猫の感じがする!!」
アルスがしれっとして、
「違いますよ、彼は魔物に捕らわれていたんです。なんでも隣国の者だとか。長い間魔物の巣に居たのだから猫の気配がして当然です」
「そ、そうか、まあいい。さっさと出て行ってくれないか!?」
アルスがあっさり答える。
「ではそうしますね。剣ありがとうございます」
そうして3人は町を出た。

「ありがとうございます。助かりました」
嬉しそうな声。
「あ、紹介が遅れましたね。私の名前はフロウと言います」
ニコニコとフロウが答える。
「それで、またお願いなんですが……私を旅に同行させてもらえませんか?」
「危険だよ?」
リュウトが言う。
「大丈夫です。これでも猫を統べる者ですし、私なら天空の者にも顔が利きます。足手まといにならないように気をつけますので。お願いします!」
「どうする?アルス?僕は良いと思うけど。フロウ君悪い人じゃないようだし」
「好きにして良い」
「そうですか!ありがとうございます!」
3人は広い草原へと歩いていった。
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